2012年3月の小ネタ

マックが経堂にやってきた [id]

2008年に、惜しまれながらも閉店した下北沢の洋食屋「マック」。 いかにも「洋食屋」というメニューで、ハンバーグが名物だった。僕はそこのハンバーグと白身魚フライが大好きだった。カウンターにかけてキッチンをよく眺めていた。店主が次から次へとハンバーグを焼き、フライを揚げ、トマトを切っているのを、自分のミックス定食ができあがるのを待ちながら、ぼーっと眺めているのが好きだった。

店主の石田さんはスティーブ・マックイーンの大ファンで、店名もそこから来ているくらい。店内にはマックイーンのブロマイドが沢山貼られていた。 閉店の際には沢山の寄せ書きが集まるなど、ファンの多かったお店だった。閉店してだいぶ経った後で、風の噂に石田さんが亡くなったと聞いていた。

その「マック」の味を受け継いだ店が、なんと地元経堂にオープンしたと友人から連絡が入ったからには、行かない訳にはいくまいと、昼食を食べにオープンの翌々日に行ってみた。その店の名は「洋食バル ウルトラ」。そこでパクチーハウスの恭さんとバッタリ会ったりしながら、ハンバーグランチを注文。そして出てきたのは…

あーっ! これだよこれ!!! このボコボコした形とソース! マックの味に比べると少し甘いかな、とも思ったけど、なんせ4年前の記憶なのでアテにはならない。ともかく、うまい。懐しい。食べているうちに目が潤んできた。

後日、今度は夜のメニューを攻めに行ってみた。「洋食バル」の名にふさわしく、夜はお酒も出すお店になっていたのだ。メニューを見て気になっていた料理を色々頼んでみる。レバーペースト、うまい。ポテトサラダ、いいじゃん。ラタトゥィユ、あら素敵。これはいい、いいぞ。何故か気分は「孤独のグルメ」の井之頭五郎になりながら、再度メニューを眺めてみると…

おいおい、こないだテレビ版の「孤独のグルメ」でナポリタンやってたから、食べたいなと思ってたんだよ。タイムリーだなー。しかしこの「(もちろんアルデンテではありません)」ってのはなんだ? という訳で頼んでみたら…

うひゃぁ、来ましたよ「ナポリタン」! 「『ナポリタン』なんてスパゲティ料理はイタリアにはないからニセモノだ」とか言うバカは、ナポリタンが洋食という名の日本料理であるということを知らない。これはその、洋食の「ナポリタン」である。うまーい!!! マックの定食のつけあわせとして皿に盛られていた、あの太いスパゲッティ。それをさらにパワーアップした、「洋食屋」にあって欲しい逸品だ。

「ウルトラ」の店主、石田幸路さんは、亡きマックの店主の息子さん。開店のいきさつが、下北沢経済新聞の記事になっているのを読んで初めて知ったのだが、オープンした日は亡き店主の誕生日だったそうだ。店の奥には、「マック」の店内に飾ってあったマックイーンのブロマイドが一枚、そっと飾られている。

2012.3.2