2006年11月の小ネタ

2日 [id]

ちょっとした検査のため、いわゆる大病院へ。自分のことでこの種の病院へ行くのはこれが初めてだ。しかしこれが大層気の滅入るもので、というのもこれだけ人が沢山集まって、なおかつあまり楽しい雰囲気でもないのに、一種サービス業的な形態をとっているものだから、クレームをつける客(患者)がやたらといるのだ。しかもそれぞれにとってはそれは (本人にとっては) 深刻なものだから、そのクレームのつけ方も凄まじい。といっても、端から聞いていれば「〜時に予約したのにもう30分も待たされている」のようなものから、「30分後には出なければいけないから、診察の順番を早く回してくれ」だの「ちょっと遅れたくらいで順番を後に回すとは何事か」といったように、勝手なものばかり。しかも、担当医に直接文句を言えないためか、受付の事務員や看護師に対してみんなえらく高圧的に迫る傾向がある。

しかしこうして見ていると、やっぱり病院にはサービス業の側面もあるからして、なにかしら工夫する必要もあるだろうなぁ。とはいうものの、これが遊園地だと、行列の長さにウンザリしたとしても他のアトラクションに移ることもできるが、病院だと、内科が混んでるから今日は眼科にしよう、という訳にはいかないから、選択の自由を与えることによるストレスの軽減、という手法は採れない。どうしたものか。

8日 [id]

Reed-Solomon 符号の勉強に勤しむ。この符号はガロア体に基いた計算を多用する。計算機科学の論文だと、コードにすると簡単に理解できるような概念を無理矢理数学的に記述したがために激しく複雑になるということがままあるのだが、こいつも若干その臭いがする。この世界には、論文の中に数式が含まれていればいる程、論文の格が高くなるという信仰があるようだ。Σが含まれていればなかなか結構、行列があれば申し分ない、といった感じ。かくいう僕も単純な計算をわざわざ数式に起しなおした事が何度かある。結局、Reed-Solomon 符号を実装したコードをネットから探してきて理解しようとしているのだけど、これ、コードにしても結構複雑だな。

10日 [id]

明日は Playstation 3 の発売日。近所の小さなゲーム屋にも10台近く入荷する予定らしく、夜には店の前に短かいながらも行列ができていた。頑張るなぁ。開発者向けの機材すら品薄らしく、折角の Linux 搭載ではあるが、オープンソース的に盛り上がるのはだいぶ先のことになりそうだ。

11日 [id]

ストリートファイター:その後。渋いなぁ…。

15日 [id]

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16日 [id]

QRコードの仕様書である JIS X0510:2004 の中に、おそらく間違いと思われる箇所を発見した。 31ページにある表13で、バージョン14・誤り訂正レベルM の RS ブロックの 2番目の項目が「(65,44,12)」となっているのだが、これは「(65,41,12)」の間違いではないか。と思って、デンソーウェーブに確認したところ、やはりこれは間違いだったという連絡がきた。ただし、現時点ではまだ正式には訂正情報が出ておらず、上に書いたことがさらに間違っている可能性もある。どうかこの文章を鵜飲みにしないようお願いしたい。この文章の情報を元にした結果損害が生じても責任はとらないので、そのつもりで。

もっとも、RS ブロックの個数は、この箇所以外は規則的に生成できるから、この数値を直接参照して使う人はいないと思うんだけどね。

20日 [id]

1chip MSX が届いた!

とりあえず箱から出して起動画面を確かめたところでおしまい。ゆっくりいじりたいけど、暇がない…

21日 [id]

今日から二日間、GNU General Public License Version 3 についての国際会議 “International GPLv3 Conference” に参加のため、秋葉原は UDX ビルへ。Richard M. Stallman をはじめ、FSF や FSF Europe、 FSF India などのメンバーが来日し、講演やディスカッションをするのだ。今日は RMS の講演があったのだが、場内満員の大盛況。

RMS の講演は現在 2nd Draft まで来ている GPLv3 の概要について。 Free Software の意義やこれまでの歴史と、version 2 からの主な変更点について語っていた。 RMS の喋り方は「MIT AI Lab. の出身者」という情報から想像するような、倍の言葉を倍の速度で喋るようなものとは異なり、非常にゆっくりと丁寧に発音するもので、とても聞きとりやすかった。質疑応答では、「私は難聴なので、ゆっくりはっきりと発音して欲しい」とも言っていたので、自然とそういう喋りが身についたものだろうか。

さて、肝心の変更点だが、一番の争点となっているのはなんといっても、 DRM と特許に関する条項であろう。RMS も、この二つについては特に重点的に丁寧に説明していた。

DRM については、現在の案ではその対象が非常にはっきりしてきている。すなわち「“TiVo-isation” の阻止」がその目的である。その Tivoisation というのは字面からもわかるとおり、TiVo のマシンで起きたことである。 TiVo の内部で走っているソフトウェアは GPL 下で配布されており、ソースコードは入手できるしコンパイルも可能なのだが、新たにコンパイルしたバイナリを TiVo にアップロードして走らせることはできない。というのも、TiVo 内部でバイナリをチェックしていて、我々にはわからない手法で生成されたシグネチャを持つバイナリしか、 TiVo 内で走らせることはできないようになっているのだ。すなわち、ソースコードが公開されていたところで、それをコンパイルし直しても動かすことはできないし、また TiVo 内部で動作しているバイナリが本当にそのソースコードそのままから作られたものであるという保証もないのだ。これでは Free Software の掲げる理念はまったく満されない。にも関わらず、そのソフトウェアは “Free Software” として配られるのだ。 GPLv3 ではこれを阻止するため、ソースコードからコンパイルされたバイナリを実行するのに必要な暗号鍵も配布物に含めることを要求するものになっている。そして、現在「DRM 条項」と呼ばれている条項が要求するものは、それだけである。

つまり、2nd draft の時点では、当初言われていたような、DRM に関連する技術すべてを否定するような文言は盛り込まれておらず、 Tivoisation のみを阻止することを目的としているのだ。 2nd draft はざっと目を通したのみで、この事には気がつかなかったのだが、こうして説明を受けると、充分に納得できるものがある。

特許条項については、特許訴訟の危険を負わせないことを明言するものとなっている。これもソフトウェア特許の無効化を狙う激しく攻撃的なものではなく、そのソフトウェアの使用・改変の自由を明確にするために必要なものとして盛り込んだもの、ということができるだろう。

質疑応答では、「オープンソースソフトウェアでは…」と言いかけて RMS に「Free Software についてなら議論できるけど、オープンソースソフトウェアについてはできないよ。」と嗜められるといった、「RMS のいる風景」が見られた。僕も一つ、GPL は著作権に依存した「実装」になっているけど、著作権にまつわる最近の動き、Creative Commons とか、には影響を受けるのか、と聞いたときに、「Creative Commons については私は喋れないよ」と先に釘を刺されてしまった。ただ、著作権の延長などの動きについて警戒している、といった旨の発言はしていた。

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RMS の講演の後、FSF India や FSF Latin America からそれぞれの国・地域における現状報告があった。最後にパネルディスカッションの時間が設けられていたのだが、パネリストが自分の立場表明をしたあたりでほぼ時間切れ。パネリスト間の議論がなされないまま質疑応答に突入してしまった。立場表明の間に FSF India から、インドで Free Software を使った教育が行われている、という事例紹介があったので、「それは Free Software を使ったコンピューティングの教育なのか、それとも Free Software という概念そのものについての教育なのか」と質問したところ、両方だ、という答が返ってきた。そこで「是非参考にしたいので教材とか course program のようなものは公開されていないか」と聞いてみたら、まだ公開された資料はないとのこと。これについてはまた別の FSF India の人が、SELF project を参考にして欲しい、と述べた。SELF では、Free Software を教育で活用する上での教材や知識を集積・共有することを目的としているそうだ。この活動は非常に興味深い。大学の講義でも Free Software を使う場面は増えてきているので、日本語教材も収集していくとかなり面白いのではないだろうか。

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そういえば、誰の発言だったかは覚えていないのだが、「Microsoft は、Windows のセキュリティホールを塞ぐパッチは数ヶ月遅れでリリースするのに、 DRM に空いた穴は数日で塞いだ」というのがあった。これは FairUse4WM の件を指しているのだろうが、確かに三日でパッチ出したからなぁ。

22日 [id]

GPLv3 カンファレンス二日目。午前中は Linux Kernel の GPLv3 への移行可能性などについて。また、“GPL Compliance” という、GPL 違反のチェックや違反に対する警告、あるいは違反を避けるための相談などを行っている部門の紹介があった。もっとも、片付けないといけない用事があってそれを遂行しながら聞いていたのでよく覚えていない。どちらも発表資料がGPLv3 カンファレンスのページに置かれているので、興味のある方はそちらを参考にしていただきたい。

午後は日本語による日本での事例を紹介するパネルディスカッション。一つ目のパネルでは、まつもとゆきひろ・岡村久道・鈴木裕信らが、日本における Free Software 活動について講演した。これはパネルディスカッションだった筈なのだが、三人の講演が終った後、いきなり会場との質疑応答へ。どこがパネルディスカッションなんだか。しかも、まつもとさんは Ruby のライセンス選択について、岡村さんは GPLv3 2nd draft の解説、鈴木さんは DRM 問題について話したため、何が議論の焦点になるのかがまったく伝わってこなかった。会場の質問も結局 GPLv3 の解釈についての質問に終始し、 GPLv3 がどうあるべきかとか、日本でどう受け入れられていくのか、といった話はついぞ出てこなかった。

二つ目のパネルは Free Software と組み込みシステムについて、というパネルだったのだけど、こちらも議論が発散しがちで、チェアの野首さんが何度も軌道修正しようと試みるも、何についてディスカッションすればいいのか、パネリストも含めてよくわからないまま進行してしまっていた。

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カンファレンス終了後、打ち上げ宴会に潜入し、FSF の面々と飲んできた。自由と権利についてたっぷり議論してきたけど、だいぶくだらないことも喋ってたなぁ。六本木のバーでナンパされた話とか(突然「ギャクナン」とか言われたときは何かと思った)。

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追記: RMS の講演の記録が FSFE によってまとめられている

24日 [id]

今書いているライブラリを autoconf, automake 対応させたのだが、ライブラリ本体のソースコードは全体で 100KB 程度。それに対して生成された configure スクリプトのサイズは 700KB 超。これはなんとかならんもんかなぁ。