2010年9月の小ネタ

Twitter で書く小説 [id]

先日 Twitter でちょろっと書いた小説というか、小話。

§

今日もまた言いかけた言葉を飲み込む。一つ言葉を飲み込む度に、煉瓦を一つ積む。だんだんと壁が高くなる。手の届かなくなるところまで積み上がって外が見えなくなったら、私は外界から解放されるだろう。それだけが望みで、今日も言葉を飲み込む。

四方を煉瓦の壁に囲まれて私はいる。屋根もでき、外から私は守られている。あらかたの言葉を飲み込んだ末に、もう語ることも、語る相手もない。口をつむぎ、煉瓦を積むことを覚えなかった兄達は、今頃は狼の腹の中だろう。へらへらと笑い、藁を重ねることしか知らなかった報いだ。

壁の穴から奴がこちらをうかがっている。何故あんなところに穴があいていたのだろう。飲み込み損ねた言葉が、煉瓦を失わせたのか。何の言葉を私は口にしてしまったのか。奴がその穴から忍び込んで来る。私の孤独は、甘美な死を迎える。

§

で、出来のどうこうは置いといて、上の三つの段落はそれぞれ一つずつの tweet で書いているのだけど、 Twitter 小説の場合、tweet と tweet との間に、物語内にかなりの時間経過を表現できているような気がしていたのだが、こうして一つづきの文章にまとめるとその時間差が消えているように思える。Twitter の方だと、一つ一つの tweet が吹き出し風の表示で分けられているからそのような印象があるのだろうか。

ところでこの時間経過、何かに似ているなと思ったら、上方落語や講談で場面転換の際によく使われる小拍子に思い当たった。 あれはなかなか便利なもので、ちょっと話題を変えたいときに、言葉を費さずにすんなりと理解してもらえるので、普段の会話やプレゼンの時なんかにも使いたいものだ、なんてことを考えていたら先日引き受けた司会仕事で無意識のうちに机の上に置いてあったマイク置きを小拍子がごとく叩きつけて使ってしまった。あれ、どれくらいの人に気がつかれたかな。

2010.9.6

NewScientist Enigma 1609: 4 (もしかしたら5かも) [id]

NewScientist誌 8月21日号に掲載された、パズル欄 "Enigma" の問題#1609 (出題: Susan Denham) が面白い。ざっと翻訳すると、

私の銀行口座の暗証番号があまりはっきりと思い出せないんです―

  • 番号は数字で4桁 (5桁かも) です
  • 4種類 (5種類かも) の異なった数字を使います
  • 最初の数字は4です (5かも)
  • 二桁目の数字は4で (5かも)、他の数字はそれより小さくはありません
  • 番号は素数の4倍 (5倍かも) です
  • 番号を逆順で表すと、異なる4つの (5つかも) 素数の積になります
  • これらの条件のうち、4つ (5つかも) の条件では、私の最初の記憶 (訳注: 4のこと) が正しいです

正しい暗証番号は何でしょう?

ちょっとやってみたらとりあえず一つ解を見付けた。最後の条件が、自分自身を含むのかどうか今ひとつ判然としないのだが、僕が見付けたのは「含む」としても「含まない」としても成立する。

2010.9.7

おがくず粘土「もくねんさん」使ってみた [id]

ラピッドプロトタイピング用の造形素材を色々とあさっているときにみつけた、おがくず粘土「もくねんさん」(amazon)を紹介します。

鉛筆工場から出てくる大量のおがくずを粘土のような造形素材にしたもので、乾くと木のような質感になるのだとか。で、届いたのがコレ。さっそく開封してみたら…

もの凄い、鉛筆の削りカス臭!! 鉛筆削り器からただよう独特の香りと寸分違わぬ匂いがする。慣れると小学生に戻ったような気分もしてきますが。で、触った感じは、ちょっと固いブロンズ粘土のような感じ。

で、説明書によると、鉛筆の芯を入手して、これでオリジナル鉛筆をまずは作るというのがセオリーらしい。ということでさっそく真似してみようと思ったものの、鉛筆の芯をすぐに入手できるアテもなく、かといって鉛筆を分解して取り出すのはさすがに無駄が過ぎる。なので、久しく使っていなかったシャープペンシルの芯を埋め込んでみることにしてみた。

こんな感じで、といってもわかりませんが、芯を中に埋め込んで、円筒形に丸めて、乾かせばできあがり。乾ききるまでに一日くらい放っておかないといけないので、まったくラピッドプロトタイピングではない。

乾いたものを、ナイフで削ってみた。削る手応えは、確かに鉛筆のそれによく似ている。削っていくうちに、あの削りカス臭がまたしてくるのも嬉しい。しばらく削っているとシャープペンシルの芯が現われてきた。おお、まるで鉛筆!

さっそくオリジナル鉛筆で落書き。芯ともくねんさんがうまく密着していないためか、まったく頼りない書き心地だけど、いくら書いても線が太くならず、まるでシャープペンシルのよう。(あたりまえだ)

結論からいくと、これはなかなか楽しい素材。切削加工もできる造形用粘土として考えるとスカルピーの方が使いやすいと思うけど、木材の質感を自由な形状に与えることができるというのはなかなか面白い。あまり削っちゃうと普通の木工細工のように見えてしまうので、むしろ、手で作ったそのままの、ざらっとした表面をうまく残した方が楽しめそう。

2010.9.21