2010年4月の小ネタ
明治大学理工学部に移りました
この4月から、明治大学理工学部情報科学科に転職いたしました。新しく「インタラクティブメディア研究室」を開き、特任准教授として研究教育に従事することとなりました。2年ぶりに大学に戻ることとなりました。
今まで以上に教育に深く関わることとなりますが、社会の要請に応えつつ、次世代の科学技術を支える人材の育成のために、力を注いでいくつもりです。
皆様のご支援、よろしくお願いいたします。
The Elements of Style (Strunk & White)
以前からよく薦められていた、“The Elements of Style” (Sturnk & White, ペーパーバック版) を Kindle で読んでいる。洗練された英文を書くための指南書である。 Kindle 版は若干編集が雑で、本文と例文とが明確に分けられていないので読みにくいのだけど、中身自体はとても勉強になる。
ちょっとした例文や説明が、実に気の効いた文章でなされているのがいい。compare to と compare with の違いの説明として、“Paris has been compared to ancient Athens; it may be compared with modern London.” と例を示している。 ちなみに compare to は両者の共通点に、compare with は差異に、それぞれ注目しているという違いがあるのだそうな。上の例文はそれを綺麗に表している。
また、“Words and Expressions Commonly Misused” という章では、間違った使い方やあまり褒められたものではない使い方をされやすい語を挙げている。 この中で、factor や feature のおかしな用法について、それらを “hackneyed word” と呼んでいる。Kindle 内蔵の辞書で調べてみると、 “(of a phrase or idea) lacking significance through having been overused.” とある。 元々は Hackney 産の馬を指す言葉から来たもので、色んな場所でさんざん使われているせいで目を引くものではなくなった言葉を意味するようだ。日本語で言えば「陳腐化」が近いだろうか。
こんな感じで、いささか古い本ではあるが読んでいてなかなか面白い。 全文が Web で公開されている ので、英語を学んでいる人はまず一度読んでみて欲しい。
Kindle ちょっといい話
最近は鞄の中に入れっぱなしの Kindle なんですが、気がついたらバッテリー切れしていました。その時の画面がこれ。 おそらく、バッテリーの残りがある値を切ったときに、この画面を出す仕掛けなんでしょう。その後、バッテリーが完全に空になっても、電子ペーパー部分はそのままその画面が残るので、こういうことができる。
出荷時の画面の場合といい、 電子ペーパーならではの色々な工夫が施されていますね。
マーク・ピーターセン「日本人の英語」
日本人向けに書かれた、日本人英語独特の癖について論じた本は沢山あるけれども、 その中では割と早くに書かれた方である、マーク・ピーターセンの「日本人の英語」を読んでみた。 出版時(1988)は明治大学政治経済学部教授とのことで、キャンパスは違えど同じ職場の方が書いた本ということで若干の親近感を持ちながら読んでいる。最近英語の本づいているが、 こちらも色々と発見があって面白い。
この中で ‘over’ と ‘around’ の二つの前置詞の使われ方の違いについて説明しているくだりがあって、 その違いを「回転軸の違い」と解いている。over が水平方向の、around が鉛直方向の、それぞれ回転軸を意識したもの、ということなのだそうだ。 まぁこれは僕等にもわかりやすい。over は飛び越すような、around は迂回するような運動だというのは、英語を普通に学んでいればわかってくる。
が、これが動詞と組み合わさって使われると、面白いイディオムになって現われる。本で例文として挙げられているのが、
Why don't you come over sometime?
Why don't you come around sometime?
という文章で、どちらも「いつか近いうちにでも遊びにおいでよ」と訳せる。ところがここで over と around という前置詞の違いにより、微妙な意味の違いが出てくる。 come over に比べると come around の方が少し遠回りの印象があるぶん、 やや勧誘の度合いが低い表現となる。この違いを訳し出すとするなら、前者が 「近いうちにぜひ遊びにきてください」、後者が「そのうち遊びにきてください」 とでもなるだろうか。
ところでこの本には色々な例文が登場してくるのだけど、次の例文を見た時にはさすがに面くらった。
The food served at the university dining hall is only barely edible. Visitors are accordingly advised either to bring their own lunches or to make arrangements to eat off campus. (その大学の食堂で出される食事はほとんど食べられるものではありません。ですから訪問される方は、自分で昼食を持参するかキャンパス外で食べる手はずを整えておくようお勧めします。)
「日本一まずい」とまで評されることのある明大生田キャンパスの学食のことですかねこれ??? マーク・ピーターセンの実体験か、あるいは生田キャンパスのどなたかが英訳を依頼したときのものかな…。