ビデオゲームの部屋:ARCTIC (ARTDINK, 1988)
当時すでに「A列車で行こう」「地球防衛軍」等でその地味ながらも高いゲーム性で名声を確立していたアートディンクが出した、 ARPGの最高峰。発売から10年以上経た今でも、これを越えるARPGは存在しない。 そう断言できるのは確固たる理由がある。何故なら「ARCTIC」こそが世界初の ARPG であり、 「ARCTIC」以降、ARPG は世の中に存在しないのだ。ちなみにここで言う“ARPG”とは、
“Active Rail Playing Game”
の事を指す。…いや、ホントにマニュアルにそう書いてあるんだってば。
与太話はともかくとして、「ARCTIC」はいかにもアートディンクらしい、よくできたパズルゲームだ。 「A列車で行こう」のレールから発想が来ているのだそうだが、ゲームの舞台には、 レールとポイント、そしてレールの上を走り回るボールが登場する。ゲームの目的は、 慣性の法則に従って動いている青とオレンジのボールを、同色のシートに納める事にある。 はじめは全てのボールがちゃんとシートに納まっているのだが、ゲーム開始直後にボールがシートから射出され、 レールの上を走り回る。こいつらを元のシートに戻す訳だ。
プレイヤーはボールを直接制御する事はできない。その代わりにレールに設けられたポイントを切り換える事ができる。 ボールの動きをにらみながらタイミング良くポイントを切り換えて、シートまで誘導していく事が求められているのだ。
このゲームのポイント(まぎらわしい)は
- シートには違う色のボールが納まる事もある。これを追い出す事はもちろん可能だが、同色シートに納まっているボールは全て同時に追い出される。
- 全てのポイントはやはり青とオレンジの二色に分けられていて、同色のポイントは一斉に切りかわる。
- どのシートに納めなくても良いボールが二種類ある。銀色のボールは無害だが、 紫色のボールは、青やオレンジのボールに触れた瞬間にゲームオーバー、その面のはじめからやり直し。
さらに、ボールの動きで注意しなければいけないのは、
- ボールには運動量がある。普通はシートから射出された時の初速が維持されるが、 他のボールと衝突すれば速度は変化する。坂を上れば減速するし、下り坂なら加速する。 さらにコース上には加速装置まで設置されている事もある。
- 二本のレールが近接している場合は、隣のレールを走っているボールと接触する事がある。
以上を踏まえてボールを何とかして操らねばならない。ボール同士をぶつけて方向転換させるだとか、 他のボールをぶつけて運動量を伝えて坂道を登らせるなんてのは常套手段。 ポイントがまったくない面があったり、 その面をクリアするのに必要なだけの運動量を持っているのが紫色ボールだけ…なんて面もある。 極めつけは、30面をクリアした後に現れる、レールが見えない面。 ボールの動きでレールの配置を推測しなければならないのだ。「こんなのやってられっか!!!」と初めて見たときは思ったのだが、 意外と簡単にレールの配置は理解できる。
頭を使って解法を探すパズルとしての面白さ、 動き出したら止まらないボールを制御するアクションゲームとしての興奮、 クリアタイムを限界まで縮めるマニア的追及。これだけいろいろと盛り込まれていながらも、 ゲームの構造はいたってシンプルなのが素晴らしい。誰でも楽しめる ARPG の傑作だ。 (だから「ARCTIC」しかないんだってば)
余談ですが、同社の「ハウ・メニ・ロボット」とセットで「クリスマスパック」と称して通信販売されたものを持っているんですが、未だに「ハウ・メニ・ロボット」の方は理解できていません。コンセプトは面白いんだけど、 いかんせんパズルゲームとしての完成度は今ひとつ…。
画面上部の長い坂道を登らせるために、下の環状線の加速器を使ってボールにスピードをつけなければならない。
ポイントがなく、シートからのリリースタイミングのみの勝負。
慣れるとあっという間にクリアできるようになる。
これがレールの見えない面。でもクリアは簡単。画面上と下のシートは落ち着いて対処すればすぐに収まる。
問題は真中の二つだが、銀玉に注意していれば問題なし。実はスタートさせるタイミングが重要。