エッセイ

19世紀のパリ・下水事情

先に書いた「うらはらな言葉」で取り上げた、渡辺一夫の短文「パリの記念」で紹介されている、1894年に発布されたパリ市の衛生条例に関する記述を、あらためて検討したい。 (パリの便所の壁に打ちつけてあった)その貼り札には、「一八九四年七月十日発 …
2016.12.27

うらはらな言葉

『高校生のための文章読本』(amazon)というなかなか読みごたえのある本に、仏文学者・渡辺一夫の短文「パリの記念」が収録されている。書かれたのは 1955年ということだが、それを読んで時代の移り変りというか、日本人のある意味での変わらなさ …
2016.12.27

ほぼほぼ(数学)

数学の分野で「たかだか」という表現が使われることがある。元々は日常的な言葉だが、数学的にはそれなりの厳密な定義がなされていて、日常語としての「たかだか」とは少々用法が異っている。日本語版 Wikipedia では「高々(数学)」と、「(数 …
2016.11.2

飛ぶ夢を見なくなってから

そういえば、空を飛ぶ夢を見なくなってからだいぶ経つ。 「空を飛ぶ夢」というと、爽快感とか自由、希望とか、はたまた奔放な性交(唐沢なをきが漫画で描いたように、どんな夢でもエロネタに結び付けられるものだ)といったものを想像されるかもしれないけ …
2016.10.30

ゲーム主人公呼称の共有問題

コンピュータゲームで主人公の名前を好きなようにつけられるとき、友達との会話で主人公を何と呼ぶか? さらには二次創作作品で主人公を扱っていること示す方法について。
2016.10.17

「透明な主人公」という類型

コンピュータゲームの主人公キャラクター類型の一つに、寡黙だが凄腕もしくは努力家、というのがある。小説や映画と異なり、プレイヤーが能動的に物語に関わる一方で、用意されたシナリオに沿ってゲームを進行させねばならないコンピュータゲームの宿命を象徴するこのキャラクター類型を、『ポートピア連続殺人事件』・『幻想水滸伝』・『ボクと魔王』 などを参照しながら論考する。
2016.10.5

バーチャル・リアリティと物語

バーチャル・リアリティ (VR) が再び脚光を浴びるにつれ、映画の元祖的存在である『ラ・シオタ駅への列車の到着』を引き合いに出し、スペクタクルな迫力という原始的な映像体験が VR により蘇えるのではないかという言及が見られるようになった。これについて、映像史的観点からコメントしたい。
2016.10.5

ゲームのちょっと怖い話

伊集院光の「深夜の馬鹿力」2011年5月16日放送分の、思い込みや勘違いなどの心理的錯誤にまつわる体験談を集めた「空脳アワー」でこんな話が披露されていた。 幼稚園の頃、近所の友達がスーパーファミコンを買ったというので遊びに行ったところ、その …
2016.9.11

2011年3月11日のタイムカプセル

先日、福島県双葉群の浪江町を訪問する機会があった。原発事故の影響でながらく立ち入り禁止になっていたが、現在は「避難指示解除準備区域」に指定されており、日中の立ち入りはできるようになっている。 放射能汚染のために復旧作業もままならず、地震直後 …
2016.8.9

ポケモンGoのデザインは「歩きスマホ」を促しているか否か問題

ざっとネットに出ている論調を見てみると、ポケモンGoが「歩きスマホ」を抑制している点として、 画面を見ていてもメリットがない やせいのポケモン出現は振動で知らせる やせいのポケモンとのバトルは立ち止まってやらないと難しい ポケストップやジム …
2016.7.25

投票することの意味

こんどの参院選から選挙権が「18歳以上」に引き下げられたため、大学にも選挙権を持つ学生が急に増えた。教員として、なにかしら伝えられることがあればと思って書いてみた。投票先をどう決めるとよいか、といったことについてはあちこちですでにいっぱい書 …
2016.7.5

靴下を揃えても

靴下はすべて同色同形状に揃えておくと、洗濯して靴下を整理する際にいちいちペアとなる靴下を探さずに済むので効率的だ、という説がある。確か、どこだかの数学者のエピソードとして、昔読んだ本に紹介されていたように思う。
2016.6.23

キング「死のロングウォーク」に施された仕掛け

前の記事の続き。 スティーブン・キング『死のロングウォーク』のある章にエピグラフとして掲げられた次の一節。 「血が流れだしました! リストンはよろめいています! クレイはやつぎばやに連打をくりだしています! じりじり押しています! クレイは …
2016.6.15

クレイ-リストン第二戦

「血が流れだしました! リストンはよろめいています! クレイはやつぎばやに連打をくりだしています! じりじり押しています! クレイはリストンを殺そうとしています! クレイは殺そうとしています! みなさん、リストンはダウンしました! ソ …
2016.6.15

残像ディスプレイによるセキュア光通信

華不魅『GLAMOROUS GOSSIP』に、上のような描写が出てくる(単行本5巻)。細かい説明はないので想像で補うしかないのだが、腕時計型のデバイスは残像ディスプレイになっていて、口座情報を秘密裏に相手に伝えることを目的としているのだろ …
2016.6.3

『ズートピア』に過剰に期待し過ぎた結果

いやたしかに、『ズートピア』凄くいいアニメーション映画です。 なんだけど、動物達が謎の進化を遂げて肉食動物と草食動物が殺し合うことなく暮らすようになったとか、ズートピアに犬・猫の類や鳥がいないところとか、そもそもの「ズートピア」という言葉の …
2016.5.8

よそいき言葉のピクトグラム

公共の建物におけるトイレ案内はデザインのほころびの宝庫で、なにしろ緊急事態を抱えた人の社会的な生き死にを分けるものであるから、おのずとそのデザインにもゴツゴツとした実用本位な側面がどうしても出てくる。
2016.3.27

痛みと空腹

頚椎を痛めて以来、痛みで寝付きが悪くなることが多いのだが、「うわ、これは痛い、こんなの眠れるわけがない。もう駄目だ。」と思っていても、いつの間にか眠っていたことに朝になって気づく、というのを幾度となく経験している。これがさらに痛みが強くなっ …
2016.2.1

Let the Episode IV be

ビートルズの “Let it be"、現在入手しやすいものでは、 ジョージ・マーティン版(シングル版) フィル・スペクター版(アルバム版) Naked 版 の3種類ある。これらのうちのどれが好きか、という質問に対して、「 …
2016.1.10

『ドラえもん』における「空き地」描写の変遷

『ドラえもん』に出てくる「空き地」、と言われれば、奥に土管が三本積まれた風景くらいはすぐに思い浮かべることができるに違いない。では、その空き地には他に何があったか、と問われると、すぐには思い出せない人も多いだろうし、その答も人によってまちま …
2015.12.24