夜泣きの解決と卒乳を同時に達成できた話

※あくまでも私一人の、一回きりの体験談ですので、誰にでも当てはまることを約束するものではありません。

うちの娘は1歳と8ヶ月の頃まで、夜泣き癖がありました。その頃の就寝ルーチンはだいたい、

といったものでした。必然的に夫婦ともども寝不足を溜め込んでいたのでなんとか改善を図りたいと思っていました。また、夜泣きに加えて「添い乳」の負担は母体に結構重いらしく、すでに食事は離乳食に切り替わっていて日中の授乳は止めていたこともあり、そろそろ添い乳も止めて完全「卒乳」したい、という要望が妻からありました。

まずは情報収集

そこで、とりあえずは色々と情報を集めようとしたのですが、ネットで調べるとまぁ胡散くさい情報の多いこと多いこと。「フランス(アメリカ)の赤ちゃんは夜泣きをしない」みたいなものから、「肛門に管つっこんでガス抜きするとよい」みたいなものまで、怪しい情報ばかり。†1

とはいえ、決定的な情報がある訳でもないので(あったらとっくに解決してる)、えいやとアタリをつけて実行に移すしかない。あちこちの記事に目を通し、我が子の夜泣きの様子を観察してなんとなく「これに該当するのではないか」と思ったのは、「夜泣きをあやそうとしては駄目」という説。

いくつかの情報を総合すると、

ということらしい。まぁ、本人が実のところどう思っているのかはさて置き、この説は教育に携わっている身としてなんとなく親近感を感じたので†2、この方法を採用してみることにしました。

どう実践したか

一応の基本方針は立てたものの、どう「放置」するかはなかなか悩ましいところもあります。「別室に隔離して放置せよ」という記事もありましたが、広い一軒家ならいざ知らず都内のマンション住まいとしては、夜中にずっと泣き続けられたらさすがに近隣迷惑になり過ぎではないか、親を探して歩き回って怪我しないか、実は病気になってたりしたら…親の身になると心配の種はいくらでも湧き出てくるもの。さて、どうしたものかと考えていたのですが、考えるよりはまずはやってみるか、の精神で、以下のように実践してみました。

こんな感じで、子供の観察はしつつ、こちらからは手出しはしないというのが基本方針。

懸念として、結局これは僕が隣にいることになるので、次から夜中に目覚めて僕が隣にいなかったらやっぱり夜泣きするんじゃないか、とも思ったのですが、もう一日同じことを繰り返したら、その日以降、親が隣にいなくても夜泣きしないようになりました。

その後、寝る前の授乳要求もまったく無くなり、夜中に起きても大泣きすることはなくなりました。たまに、無言で親の布団に潜り込みにくるようにはなりましたが。

どうしてうまくいったのか

上記はあくまでも一回こっきりの体験なので、そこからはっきりした事はもちろん言えないし、誰にでも当てはまるものではありません。うちの子供に対して上記のやり方が「どうしてうまくいったのか」を、一般化して答えることはできそうにありません。

ただまあ、「なんとなくこういうことだろうな」という仮説めいたものを述べるなら、「子供は、反応が返ってこないものに対する興味をすぐに失う」という習性があることを利用しているのではないか、といったところでしょうか。

子供は、歩き回れるようになってくると、とにかく周囲のあらゆるものにちょっかいを出すようになります。触ってみる、叩いてみる、手にとって舐めてみる…いろんな事を文字通り手当たり次第に試してみて、その反応を学んでいる期間です。触ったモノの固さや暖かさ、叩いたときの音…自分の能動的な行動に対してそれがどう反応するかを一日中試しています。

「なるほど! 赤ちゃん学: ここまでわかった赤ちゃんの不思議」
玉川大学赤ちゃんラボ著 (新潮文庫)

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それに加えて子供は、何かをしてみたときの、それに対する親の反応にとても敏感です。親が喜ぶのか、驚くのか、声を上げるのか。親の表情や声を実に注意深く観察しています。親が喜ぶにせよ怒るにせよ、反応が大きい行為ほど、嬉しくなって何度もやりたがります。親の携帯電話をいじりたがるのもこのせいです。親が「ちょっとやめて!」とすぐに声を上げるので、それが嬉しくていくら取り上げてもすぐにいじりたがります。あまりに子供がいたずらするので使い古しの携帯電話を子供に与えたら、しばらくは喜んで遊ぶもののすぐに飽きてまた親のものをいじろうとする、なんて話をよく聞きますね。これはつまり、ダミーの携帯電話をいじってもそもそもたいして面白くない上に、親が無反応なので、子供はいまいち興味が持てない訳です。

子供が泣こうがわめこうが無反応を通す、というのは、その意味で効果的に働いたのではないか、と考えることはできそうです。「泣いてもどうにもならないし、さっさと寝てしまった方が楽だし心地よい」と学んでくれたのではないか、と僕は思っています†3

(子育中、玉川大学赤ちゃんラボの「なるほど! 赤ちゃん学: ここまでわかった赤ちゃんの不思議」はかなり参考になりました。赤ちゃんの行動原理を学ぶのは、子育ての役に立つだけでではなく、子育てを「楽しむ」方法も示唆してくれます。なお、上記の考察は、同書を参考にしたとはいえ、私が勝手に考えたものであり、なんらかの調査・研究にもとづく根拠のあるものではありません)

子育ては常に試行錯誤

子供の夜泣きに困っておられる皆様のお役に立てれば、という気持ちでこの文章を書いてはいますが、子育ては結局のところ、親と子、そして周囲の環境、すべてが関わってくる営みです。よその家庭でうまく行ったやり方であっても、親も違えば子も違う以上、自分の家庭でそれがうまく行くとは限らない。振り返れば我が家の子育ても、他人の意見は色々と参考にしつつも、常に試行錯誤の連続です。

ともすれば思い通りに行かないことの連続でくじけそうになりますが、子育てを続ける上で、「こうすればうまいくはずだ」という気持ちは、できるだけ遠ざけた方がよいでしょう。「うまくいくはずだ」という気持ちは、調子が狂うと「うまくいくはずだったのに…」という絶望的感情に変化してしまいます。子育てに関するアドバイスや資料は、「うまくいったらめっけもの」くらいの気持ちで受け取るようにした方がよさそうです。

その意味で、子育て当事者の周囲も気を配るべきです。外野が「うまくいくはず」を無邪気にぶつけるのは慎まねばなりません。子育てに奮闘している当事者に対してこうした「はず」をぶつけるのは害が多いのです。周囲は、試行錯誤する親を、優しく支えることが肝要です。†4

すべての親に、エールを!

2018.2.26

†1
ちなみに前者の方がデタラメなのは、"infant sleeping problems (乳幼児 睡眠 問題)" とか "baby night cry (赤ちゃん 夜泣き)" とかで検索すればいくらでも情報が出てくることからも分かります(フランス語に翻訳して試せばフランス人もこの問題に悩んでることはすぐ分かる)。PubMed のような学術論文検索エンジンでも、夜泣きに関連する各国からの報告がザクザク出てきます。
†2
黙ってれば教員がなんとかしてくれるだろう、という意識を学生から消し去るのも仕事の内。
†3
この「無反応」という技はなかなか効果的なのですが、それ故に、多用は禁物ではないかと個人的には思います。例えば、お腹がすいたとか、転んで足が痛いといった状況は本人の自力では解決不可能です。そうした場合に「泣く」という手段は極めて有効であり、それによって親や周囲の大人が解決のために動くことができます。子供が泣くことに対して無反応を通し過ぎると、「泣く」という手段自体を放棄させることにつながりかねず、これは非常に危険だと思います。
†4
もちろん、乳児に蜂蜜を与えるような、子供に害になることが明白な行為は止めさせなければなりませんが。