ゲームのちょっと怖い話
伊集院光の「深夜の馬鹿力」2011年5月16日放送分の、思い込みや勘違いなどの心理的錯誤にまつわる体験談を集めた「空脳アワー」でこんな話が披露されていた。
その後、高校生になってその友人と再会した折に、そのゲームの話をしてみたものの、そんなゲームは知らないと言われる。そのためただの勘違いで解決するかと思いきや、その数年後また別の友人に、「お前幼稚園の頃、変なゲームやってなかった?」と言われ、まさかと思いながら「それってもしかして白黒の渦巻きを回す奴?」と聞いてみたら、「そうそうそれそれ」と言われた。投稿者本人には、そんなゲームを所有していたという記憶はない。
さて、このゲームが本当に実在していたのかどうか、あるいはどんなゲームを勘違いしたのか、ちょっと見当がつかない。
しかし、ここに興味深いゲームの話がある。
Sinneslöschen社製のアーケードゲーム “Polybius” (1981) がそれで、一見なんということのないゲームなのだが、プレイする者の多くが依存症に陥り、はてに記憶喪失や不眠症、さまざまな精神的外傷を受けることがわかり、やがて廃棄処分になったり FBI が効果を分析するため回収したりして市場から製品は消え、噂のみが残った ——
というのが、”Polybius” という都市伝説のあらましである。この伝説については詳しく取材した記事が skeptoid.com にある。それによれば、1981年に “Tempest” や “Asteroids” をやり過ぎて倒れた者がいて、その話に尾鰭がついて形成されたものではないか、と推測されている。
流布している Polybius の都市伝説では、ゲームの内容についてはあまり詳しく語られていない。が、いくつかのヒントを元に、それを「再現」したゲームがいくつか作られている。その内の一つがこれ。
この動画の4分50秒あたりで、白黒の集中線がぐるぐると回るシーンがある。
世の中、ときどきこんな不思議な符合が起きる。
追記: 実在するスーパーファミコンのゲームの中から近いのを無理矢理探すなら、「ザ・心理ゲーム2」の「マジカルトリップモード」あたりかな。
白黒渦巻きが回転するシーンはないし、このモードはあくまで鑑賞用でゲームではないので、おそらくは正解ではないのだけど、うっすらとした怖さは通じるものがある。
追記2: ゲームが人の精神をコントロールする、というのは様々なフィクションで使われるネタだが、上記の “Polybius” に近いところだと、スティーブン・キング原作で1986年公開の映画 “Maximum Overdrive” (邦題「地獄のデビルトラック」)で、実在するベクタースキャンゲーム “Star Castle” (1980) が謎の怪奇現象のために暴走し、その映像によって見る者を魅了し、最後には殺してしまうというシーンがある。
映画自体は壮絶なバカ映画なんですが、原作となった短編小説の方はそこそこ面白く、短編集に収録されている他の短編とあわせておすすめ。