Let the Episode IV be

ビートルズの “Let it be"、現在入手しやすいものでは、

の3種類ある。これらのうちのどれが好きか、という質問に対して、「文句無しに Naked 版こそがホンモノ。他はもう聞けたもんじゃない」と言うような人は、初めて聞いたのが Naked 版だという若い世代の人でもない限り、絶対に友達にはなれない。

もちろん、Naked 版ならではの魅力というものがあるのは理解できるのだけど、若い頃にレコードがすりきれ、テープがワカメになる程聞いたあの “Let it be” をそんな簡単に否定できるような奴に、まともな感性など期待できる筈がない(偏見)。

ともあれ、現在に至るまでこれらのバージョンをいつでも購入でき、聴き比べてああだこうだと言い合えるというのは、ある意味恵まれている。

なんのことが言いたいかというと、もちろん『スターウォーズ』のことである。

グリードが先に撃ったりジャバがしゃしゃり出てきたり “Jedi Rocks” なるワケわからん歌が出てきたりと色々更新された「特別編」の毀誉褒貶についてはいまさら繰り返すまでもないんだけど、最大の問題は、オリジナルバージョンがいまや入手困難だという点にある。

かつて “Let it be… Naked” が発表された際に、たしか岸野雄一さんが、Naked 版で歴史が上書きされることを恐れたコメントをどこだかに書かれていたのだが、幸いそうした事態にはならなかった。それはそれ、これはこれ、という扱いがファンの間ではなされている。

しかし、『スターウォーズ』は惨憺たる有様だ。もはやオリジナル版は入手不可能、我々はハン・ソロに尻尾を踏まれる無様なジャバにこれから先ずっと付き合っていかねばならない。あっちがいい、こっちの方がいい、と言い合うことすらできないのだ。

似たような悲劇を回避できたのが『ブルース・ブラザーズ』である。ひところ DVD として流通していた Extended Version は、元々のキャラクター設定の意図や、ジョン・ランディス監督がこの映画を言ってみれば「遅れてきたアメリカン・ニューシネマ」的感性で作っていたことが明瞭にわかるシーンが復活するなど、ファンにとっては嬉しい箇所は多々あれど、映画作品として見ればやはり蛇足と言わざるをえないカットシーンにあふれた代物で、もしこのバージョンしか後世に残らないとしたら大問題だとやきもきさせられていたところ、後発のパッケージでは劇場版オリジナルに戻され、一安心した、という経緯がある。

今後、ストリーミングによる配信がメディアの主力になるのだとしたら、この問題はますます重い意味を持つようになるのはすでに各方面で繰り返し指摘されていることである。

“Let it be” は、そのよい手本となっているように思う。