桜の花のつかまえ方
自宅の近くには見事な桜の大木があり、この時期はあたりの道路をピンクに染めるのだが、勤務先での新入生ガイダンスからの帰り道、近所の女子校の学生とおぼしき二人が、その樹から落ちてくる花びらを空中でつかまえる遊びをしているのにでくわした。思えば僕も子供の頃はよくやってたものだ。あれにはコツがあって、花びらがいっぱい落ちてくる桜の樹の下で待ち受けるのはもちろん、花びらを両手で挟もうとしてもだめで、両手でお椀を作って待ってるのがよい。
こういうときに素早く妄想が始まるのが男子校育ちというか、伊集院光の深夜ラジオを聞いて育ったタイプというか。その女学生らにこうこうこうすれば桜の花びらがもっとうまくつかめますよ、と教えるところを想像したりするのだが、まあ不審者扱いだよなあ。というのは置いといて、不審者扱いじゃなかったとしても、「どうも…」と応えつつ、頭の中では「いや、別にそこまで桜の花びら欲しかったわけじゃないんだけど…」と考えちゃったりする、というのはいかにもありそうだ。友達にそう教えられたのなら一緒に盛り上がりもするだろうけど、見知らぬ他人からそう声をかけられたことを想像すると、僕ならそこですっと醒めてしまって、「そういえばなんで花びら追っかけてたんだっけ…」と考えてしまうことだろう。
それがどうしたかというと、3D プリンタとかハッカソンとかでひとはしゃぎした後の気持ちに、よく似てるんじゃないかなー、と思いあたったので。別にそれがいいとか悪いとかじゃなくてね。桜の花びらを心底欲しがっている人はそこで醒めずにそれを追い求めるだろう。ただ、「別にそこまでは…」の心境に辿り着く人はどうしたって少なからずいる筈で、しかもそれが外野からのおせっかいで引き起こされることもあるだろう。
こういう時に上手くはしゃげるようになりたいと思いつつも、あの、すっと熱狂が醒めていく独特の感じも、意外に楽しいものだったりするのは面白いところでもある。