サザエさん音楽大全に収録されている「ウンミィの歌」がすごい
テレビアニメ版「サザエさん」の主題歌や劇伴音楽を収録した『サザエさん音楽大全』が届いた。これまで何度か企画はあがってもどんな事情があってかなかなか実現されず、今回も発売が延期されるなど発売が危ぶまれていたものがとうとう発売にまで無事漕ぎつけるという快挙を成し遂げた。関係者の皆様の健闘には頭が下がる。
「サザエさん」を観て育った世代には、CDから流れてくるどの曲も聞けば瞬時に体が反応する、おなじみの曲ばかり。居間のテレビを使ってかけっぱなしにしていたら、平日の夜中にも関わらず気分はすっかり日曜日。エンディング曲「サザエさん一家」が流れる頃にはすっかり「ああ明日は月曜日か…」と憂鬱な気分になってしまった。
さて、サザエさん好きならどれもこれも一度は聴いたことがある曲が揃っている中、「へっ?」と思った一曲が収録されていた。「ウンミィの歌」というもので、火曜日の再放送版サザエさんのオープニング曲で使われていたというものだが、僕は聴いたことがなかった。あまり長期に使われることはなかったようだが、それも納得するほど、とにかく歌詞が凄い。
海の時計はハイ9時ラ
タイがつぶれりゃ マッタイラ
ブリはブリブリ オコリンボ
駄洒落の羅列というだけでなく、そもそもサザエさんと関係ないよ!! 関係あったとしても
年をとっても はいワカメ
夏じゃなくても はいサンマ
けんか負けても はいカツオ
サンマ出てこねーよ!!! (明石家さんまがゲスト出演したことはあったけど)
なんというか、70年代らしいデタラメさが驚愕を通り越して微笑ましいが、作詞作曲を見て納得。伊藤アキラ+宇野誠一郎なのだ。
伊藤アキラといえば、歌謡曲からアニメ主題歌、CMソングまで幅広く手がける大作詞家。歌謡曲であれば渡辺真知子「かもめが翔んだ日」のようなニューミュージック風のものから、フォーリーブスの「ブルドッグ」のような癖のあるアイドル曲まで様々な作風を使い分ける。CMソングなら、あの「日立の樹」「青雲のうた」の作詞者であると言えば、その影響力は伝わるだろう。
が、ときどきとんでもない詞も残している。1974年「リカちゃん音頭」は、リカちゃんワールドを完全に無視したもので、
あんまん にくまん サラリーマン
ガンマン ピーマン ガードマン
からあげ かきあげ あぶらあげ
てをあげ あしあげ さつまあげ
ちょっとたべたい つまみたい
おなかスキスキ リカちゃん リカちゃん リカちゃんおんど
とまぁ、こんな前科がある人なので、「ハイ9時ラ」くらいは、むしろ「ハイ5時ラ」にならなくてよかったね、くらいなものである。
宇野誠一郎は、「ひょっこりひょうたん島」や「ネコジャラ市の11人」などを手がけた名手。アニメや人形劇など子供向けの歌でもテンションコードを入れたり、アングラ風味のシャウトを入れたりと、油断ならない名曲を生み出している。
この二人が組んだ曲としては、他にタツノコプロの「ドカチン」の主題歌がある。こちらは駄洒落成分は少な目だが、いきなり「森と泉に〜」で始まる流行ネタあり。
ところでこのCD、エンディング曲の「サザエさん一家」が、セリフつきのものしか収録されていないのが残念。配役が初期放送バージョンのもので、カツオを大山のぶ代がやっていたりして、貴重な音源なのは確かだが、できれば2バージョン入れて欲しかった。