新宿駅の案内看板についての考察
先日、新宿駅構内の案内看板に苦言を呈した武田さんのツイートがインタフェースデザイン関係者界隈で話題になっていたので、早速現場に行ってきました。
これは酷い。色だけ。分かる人しか分からない案内板 :-) 新宿駅構内 #badui pic.twitter.com/W6Qp6uXC3R
— Hideaki Takeda (@takechan2000) September 26, 2013
問題となったのはこの看板。

たしかに写真を見るだけでも指摘できる問題点はあって、
- 路線情報が色でしか示されていないので、色と路線の対応を知らないと役に立たない
- 色覚異常を持つ人には識別しづらいデザイン
があるだろう。後者についてD型やT型の色覚でのシミュレーション結果(下図)を見ると、これを識別するのはかなり辛そうだ。

とはいえ、やはり現場に行ってこないとそれ以上の検討ができないなと思ったので、その日のうちに新宿駅に行ってみた(通勤経路ですが)。そうしたら、最初の写真だけではわからなかった周囲の状況が見えてきた。 (ここから先の内容は、新宿駅構内図を眺めながらお読みください。)
まず現場に着いて「あれっ?」と思ったのは、この案内看板は意外に小さかったということ。冒頭の写真からはもう少し大きめな、遠目にもはっきり見えるような大きさのものを想像していたのだが、実際にはエレベータ脇の小さな道の頭上に掲げられたものだったのだ。

試しに Pasmo のカードと比較してみたのが下の写真。高さはざっと 20cm くらいかな?

うーん、この大きさだと記載できる情報も限られるということかなー、とも思ったのだが、一歩引いて頭をめぐらすと…

すぐ隣に、同じような大きさの看板があるのが目に入る。そっちの方は、小さい文字ながらも路線名が記載されており、近付けばちゃんと読める。路線ごとにまとめられているため、どこに行けばよいかもそこそこわかりやすい。

看板の大きさや設置条件にそんなに差があると思えないんだけど、どうしてこんなにわかりやすさの異なる看板が掲示されることになったんだろう。極端な話、別に件の看板はなくてもそれほど困らないように見えるんだよね。
実際、すぐ近くの柱に掲示されている案内ポスターはこんな感じ。こっちは近付けばさらに小さい文字も読めるから、細かい文字で行き先情報なども併記されている。

これだけの案内情報が周囲にあるため、乗降客も最後には目的地に辿り着けるだろうとは思うんだけど、やっぱり件の看板はなぜああなってしまったのか、不思議さが残る。

この看板が一番目に入りやすいのは誰だろうなー、と頭をめぐらしてみると、ここは7・8番線(中央線)のホームから階段を降りてきたところであることに気がついた。そこで、さっと階段をのぼってみた。

中央線を降りて、乗り換えなり出口なりに向かう乗客の視線を考えてのことなのか? と辿ってみることにした。この看板には、路線名と色の対応しか示されていない。出口への案内を優先して面積が小さくなってしまったが故の対応か。
で、階段を降りたときの風景がこれ。

正面に見えるのが件の案内看板になる。
もしかして、これはこういうことなのかもしれない:
- 路線と色の対応は、階段上の看板ですでに頭に入っている
- 階段を降りたところで、ホーム番号と路線の対応が件の看板でわかる
- そこで、目的のホームが右なのか左なのかさえわかれば最初の一歩が踏み出せる。あとは他の案内看板を辿ればよい
いやもちろん、そんな路線と色の対応なんで覚えてられないよとか、色覚異常だとやっぱり役に立たないとか、問題点はやっぱりあるんだけど、少なくとも階段を降りたときに決定的に不足している情報を最低限補っている看板なんだとは言えるんだよね。
この場所で乗客を適切に案内するにあたっては、とにかく乗客を右か左かのどっちかに向かわせなければいけない。どっちかさえ向けば、あとはこういう光景が待っている。

この問題の看板は、それを狙ってちょっと情報を削り過ぎてしまった結果なんじゃないかなぁ。これ以上は、実際に担当者に聞いてみるしかあるまいが、なんとも半端な情報量になってしまっているのはつくづく残念だ。
新宿駅は世界最大の乗降客数を誇る巨大な駅だ。それをさばくためには、想像を超えた労力が注ぎ込まれていることだろう。しかも現在大規模な改装工事が進行中で、状況は日々変化している。この状況で適切な案内をするというのはとても難しいに違いない。
色々と文句はあるけど、新宿駅は、この規模の駅にしては世界的に見てもかなり使いやすい方だと思いますよ。