河崎実『ウルトラマンはなぜシュワッチと叫ぶのか?』

河崎実『ウルトラマンはなぜシュワッチと叫ぶのか?』をようやく手に入れた。黒川伊保子「怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか」から連想してオノマトペ的分析がメインかと思いきや、どちらかというとウルトラマンシリーズ自体の作品論がメインだった。「なぜシュワッチか?」というメインの問いについては、本書出版後に『天才バカボン』の影響が指摘されている

それはさておき、179頁図版059のキャプションに興味深い記述があった。

ウルトラマンの戦闘ポーズはやや前傾姿勢だが、これは古谷敏(ウルトラマンのスーツに入っていたスーツアクター。福地注)の姿勢が悪いのではなく、目の覗き穴を下に開けたために必然的にこうなっているのだ。それがまた不自然な感じがして、さらに宇宙人っぽい印象を醸し出している。

なるほど。こんな観点から特撮を読み解いていくと、もっと新たな発見が出てくるかもしれない。精神論や作家論で語られがちな要素が、実は撮影現場の構造的制約から来ていた、なんて話は他にもいっぱいあるはずだ。特撮では、ブリコラージュ的にその場の思いつきやひらめき、苦肉の策で生まれた名場面は山ほどあるのだし。

この本には他にもいろいろな疑問に対する説明を試みている。たとえばなぜウルトラマンは最初っからスペシウム光線を使わないのか、という問いに対して、ウルトラマンを警察官、怪獣を犯人となぞらえ、「自分がもし警察官だとしよう。そして犯人を目の前にする。そこでいきなり犯人を拳銃で撃つだろうか」と説いている。この拳銃がスペシウム光線である。納得の説明である。(そのわりには相手をかなり弱らせてからぶっぱなしているような気もするが)

加えて、ウルトラマン達はなぜ地球に残って人類のための闘いを決意したのか、についてもシリーズ全体を俯瞰し、ウルトラマン・ウルトラセブンの二つが別格であることを説明している。特に、「帰ってきたウルトラマン」以降さしたる理由もなく地球で闘っていたウルトラ兄弟に対するダメ出しは厳しい。

ウルトラファンはぜひご一読を。